穂高槍縦走 二日目 ~The last traverse of my life~
二つの岩峰
西穂、上高地側からはガスが上がってきつつある。一息ついたコブ尾根ノ頭からジャンダルムに向かって再度歩いていく。岩壁に書かれた「ジャン」の文字。これにお目にかかるのも二度目。足元の悪い急な岩屑の上を登っていき、もうすぐピークに着きそうなところで頭上から声がした。どうやら先客がいたようだ。

岩壁に書かれたジャンの文字。

山頂へは信州側から。岩を掴んだ後に岩屑を登っていく。

空に突き出た岩柱。この辺りは柱状節理が多い。

13年ぶりのジャンダルム。前回はガスで何も見えなかったけど、今日は視界が開けている。初めて奥穂に登ったとき、山頂から見たジャンダルムは圧巻だった。そして2度もここに立つことができるとはとても感慨深い。
そして13年ぶりのジャンダルム。前回はガスの中で辺りは何も見えなかったけど、今は周りの山々ははっきりと見えている。先客は偶然にも同じ岐阜から来たという男性一人。奥穂から来て西穂へ縦走し、時間が間に合えばロープウェイで今日中に下りるとのこと。しばし情報交換をした後、彼は西穂を目指してジャンを後にした。後に、これまた偶然だけど、某SNSで彼のレポを見ることができた。どうやら無事に新穂高へと下りたらしい。
今日はこの縦走ルートにはあまり人はいないようだ。ボッチの山頂を楽しもうとザックを下ろして辺りを撮影し、行動食を腹に入れる。なんか一人小さな舞台に立っているみたいで、不思議な感覚だ。
暑くもないし寒くもない。風もほとんど無い中、しばらくここでボーっとしていたいくらいだ。それにしてもここからの眺めは素晴らしい。ちょっと残念だったのは上高地側からガスが上がり、霞沢岳が隠れてしまったことと、ジャンダルムのエンジェルがなかったこと。13年前は初代のエンジェルに出会えたけど、その後、2代目が付け替えられたと聞く。しかし登山者が引っこ抜いて落としてしまったらしいが、すぐに3代目が設置されたそうだ。しかしこの場にエンジェルは無く、よくわからない陶器の置物が置かれている。
その1ヶ月後、北アルプス飛騨側登山道等維持連絡協議会によって公式に道標が設置され、これまで置かれていたものは撤去されたそうだ。
自然公園法に違反するとのことだけど、ちょっと寂しい気がしないこともない。最近の登山者はSNSに投稿するためなのか、道標や看板を勝手に引き抜いて写真を撮る人が多いような気がする。余分な物理的外力は指導標の向きが変わったり倒れてしまったりする原因にもなるので、自分はこれらのものは絶対に触れないようにしている。2代目エンジェルはどこにいったのだろうか…

白出のコルにある穂高岳山荘。今日の宿泊地だ。

そろそろルートに戻る。ちょっとのんびりしすぎた。
ジャンダルムからの眺め。これが見たかった。
ジャンダルムから下り、元のルートに戻る。次はジャンの北側にあるもう一つの大きな岩峰、ロバの耳だ。ロバの耳へはまず大きく岩壁につかまるように登り、そのままトラバースしていく。コルからペンキマークに従い、ルンゼ上の岩を登っていくとロバの耳の肩に出る。ここで前回同様、ザックをデポしてロバの耳山頂へ。山頂にそっと供えられている遭難碑は変わっていなかった。再度、手を合わせる。

次はロバの耳。まずは岩壁を登る。

コルから見るジャンはまた変わった形だ。

目の前にロバの耳。この景色も前回はガスに浮かぶ姿しか見ることができなかった。

直下のルンゼ状の岩。鎖があるが慎重に登らねば。

ロバの耳最上部にある遭難碑。昭和17年8月遭難とのこと。

こちらは前回も見た昭和19年11月の日大医学生の遭難碑。
ロバの耳に登った後は今日の最も最難関、そして神経がすり減るほど集中しなければならないところ、ロバの耳からの降下だ。場所によっては手掛かり足掛かりが数センチの箇所もあり、一歩間違えたら奈落の底だ。ここでも下降前に大きく深呼吸して息を整える。手や足を掛ける時は崩れないか確認したうえで、一つ一つクリアしていく。狭いとpラバースの箇所も要注意だ。時々頭上を見上げてみるのだけど、見方によってはオーバーハングしているかのようで、本当にどこをどうやって下りてきたのか、後から写真を見てもよくわからないほどだ。
ようやく傾斜も緩やかになり、コルに到達した。しかしここから馬の背に向けて急な岩場を登らなくてはならない。ここでも慎重に登っていくのだが、高度が高くなるにつれ、たまに振り返り、越えてきたジャンとロバの耳の全景を楽しむ。すごいところを歩いてきたのだ。

ロバの耳から見たジャンダルム。右手奥は笠ヶ岳。見る角度に寄ってかなり形が異なるが、ここからの眺めは初めてだ。

危険なロバの耳からの下降が始まる。

ルートはペンキマークをひたすら追いかけるのみ。

こんな岩場を下りてきた。とにかく集中して。

ここからはジャンやロバの耳は見えていない。

かなり狭いトラバース。ここでの事故も多いと聞く。個人的にはこのロバの耳からの下降が今日のルートの中で最も危険で難しいところだと思う。

もうすぐコルに到達するようだ。

コルからはここを登っていく。馬の背はそのまた向こう。

下りてきた岩場を振り返ってみる。

まるでオーバーハングしているかのような岩場だ。突き出た柱状節理が穂高の険しい地形を表しているかのよう。

馬の背に向けても岩を掴みながら登らなければならない。

高度が上がるに連れ、ジャンやロバの耳が見えてくる。
ジャンダルム、ロバの耳揃い踏みの全景。本当にあの二つの岩峰を越えてきたんだよね。




